
本日は今年の3月に私がリリースしたフルアクセス断固拒否がコンセプトのiPhone専用日本語キーボードアプリNegiに関しての記事を技術面ではなく、想いの面を中心に書かせていただきます。
おかげさまで、リリースから4ヶ月経ったいま600人ほどの方が利用してくれています。
宣伝はまったくしていないので、ダウンロードされた方のきっかけとしては純粋にApp Storeでの検索、あるいは気に入ってくださった方の紹介のどちらかだとは思うのですが、日々ダウンロード数が途切れることなく少しずつ利用してくれる方が増えていっていることは大変嬉しく思います。
開発のきっかけは単純で、私自身が安全に使いやすいキーボードアプリが欲しかったからです。
私にとって使いやすい状態とは、普段、顔文字と絵文字を割とよく利用するので、顔文字と絵文字ピッカーが起動しやすいこと、URLをまとめてコピーすることがあるので、コピーのストックが出来ること、1,2文字のカーソル移動が簡単に出来ること、そしてフルアクセスの許可なしで使えること。
この4点が叶えられていれば、満足だったのですが、意外と4つセットで叶えられているアプリがなく(探せばあるのかも><)、だったら作ろう。と開発に至りました。
リリースしてから今日までに特に嬉しかったことは3つあります。
1. 日々ダウンロードが途切れないこと。
2. 開発支援をしてくれる方がいること。
3. レビューや問い合わせが非常に好意的であること。
1つ目に関してですが、自分のために作ったとは言えコンセプトに共感して利用してくれるひとが存在し、毎日増えているというのは嬉しいことです。
2つ目は、Negiはアプリ内の広告設置なし、全ての機能が無料で利用出来ますが、開発支援をしていただくことでペースト履歴のストック枠と最近追加した機能、定型文へ登録出来る件数が少し増えます。
応援の種類は120円、300円、1000円と3種類あり、どの応援を選んでいただいても同じ特典です。
私の感覚ですが、拡張分が欲しくて課金してくれてるひとはほとんどいない気がしていて、純粋に応援してくれていると感じています。
正直、コミュニケーションツールとしてのスマホ使いであれば、ペースト履歴は5件あれば十分な気がしますし(定型文に関しては追加したばかりの機能なので割愛)、何よりフルアクセスの制限のためiOSのクリップボードは利用出来ないので、アプリ内で処理しなければならないのですが、Negiオリジナルのペースト履歴は入力フォーム上でしか起動出来ないため、使い勝手が悪いです。
自分で言うのも悲しいですが、それに課金して拡張しようとは個人的には考えづらく、決定的な理由として300円や1000円を選んでくれる方がいるということが純粋に応援してくださる方が多いと感じた大きな理由です。
この事実は嬉しいというか、感動でした。
3つ目に関しては、開発者であればGitHubでスターをもらったり、イイ評価をいただけるというのは単純に嬉しいことではありますが、星をつけていただけるだけでなく、レビューや問い合わせにてお伝えいただくメールの文面から素敵なユーザーさんに支えられていると凄く感じています。
私の勝手な推測ですが、Negiをダウンロードしてくれるユーザーさんはリテラシー意識が高く、ほとんどの方がApp Storeの長い概要欄部分を読んでくれている印象を受け、理解力が高い方というイメージを持っています。
自分の開発したアプリを利用しているユーザーさんなので持ち上げているみたいな感じが嫌ですが、そう感じる理由を書いていきたいと思います。
わかりやすいのは、フルアクセスを禁止する=機能に制限付くことを理解している点です。レビューやお問い合わせの要望で無茶を言わず、可能かどうか聞いて判断することをしてくれています。
例えば、仮にNegiが何かのきっかけでダウンロード数が急速に伸びたりして、話題になっているからと何となく利用するユーザーさんが増えてきた場合、「変換が某キーボードアプリに比べて悪いので★1」「コピーが反映されない★1(iOSの機能使ってる)」のようなアプリに理解のないユーザーさんや、通販サイトなどで「届いた商品はよかったのですが、配送用の段ボールが少し潰れていたのが残念で★2にします」のような評価すべきところがズレていたりするユーザーさんは必ず増えます。
使い勝手が決して凄くよいわけではないNegiにそう言った評価がない現状を考えると、ダウンロード総数が少ないとは言え、内容をしかり評価、理解した上でダウンロードをしてくださっている方ばかりのとても恵まれた環境の中にいるのだと感じています。
Negiはフルアクセス断固拒否をコンセプトにしていますが、改めてキーボードアプリにフルアクセス許可の権限を与えると、どのようなリスクが生じるか代表的なものをあげたいと思います。
1. 入力データの外部送信(キーログリスク)
フルアクセスを許可すると、キーボードアプリがインターネットと自由に通信できるようになります。
悪意のある(またはセキュリティ管理が甘い)開発者の場合、以下のようなデータを外部サーバーへ送信できてしまいます。
入力したテキストの丸ごと送信(メッセージ内容、検索ワード、メール本文など)
個人情報や機密情報の流出(氏名、住所、クレジットカード番号、各種パスワード、口座番号など)
2. クリップボード(コピペ内容)の読み取り
フルアクセスを有効にすると、クリップボードへのアクセスが可能になります。
他のアプリでコピーしたパスワードや二段階認証コード、個人情報などが、キーボードを起動したタイミングで読み取られる危険性があります。
3. 他のアプリデータやストレージへのアクセス
フルアクセスを許可することで、キーボード拡張機能本体と親アプリ(メインのアプリ本体)との間で共有ストレージ(App Groupsなど)を介したデータ受け渡しが可能になります。
これにより、位置情報やマイク・カメラ(親アプリ側で権限を取っている場合)など、他のセンサー情報と入力データを紐付けられてしまうリスクがあります。
4. 開発元サーバーからの漏洩や不正アクセス
開発元に悪意がなくても、変換精度向上のためにクラウド(外部サーバー)へ送信された入力データが、サーバーへのハッキングや設定ミスによって外部へ漏洩する二次リスクが存在します。
「開発者、開発元を信用できるか」ということと、「システムとして安全か」は全く別の問題であり、サーバー、通信経路、外部ライブラリなど、攻撃者が狙える隙がないに越したことはありません。
このような挙げ方をすると、脅かしてるような感じに聞こえフルアクセスを求めるアプリはよくないみたいに聞こえてしまうかもしてませんが、実際Appleの思想として「キーボードアプリは、今ユーザーが目の前で入力している文字の処理だけに集中すべきであって、それ以外の場所(クリップボードやインターネット通信)に触れさせるなら、ユーザーに『フルアクセス』という重いリスクを承認させなさい」という、徹底したゼロトラストのセキュリティ設計になっている部分があります。
フルアクセスが許可されることで、利用出来る便利な機能はありますし、フルアクセスの許可を必要とするアプリの開発会社は取得した情報の取扱に細心の注意を払って運営されていると思いますので、入力した情報、スマホ内にある情報が必ず流出したり、悪用されるという話ではありませんが、利用するユーザーさんはみんなが使ってるから大丈夫という基準ではなく、リスクがあるのを理解した上で利用することがとても大事になってきます。
たまに、「ただの一般人である自分には仮に抜かれても困る情報などはない」という意見を聞くことがあります。私自身も一般人ですが、自身の情報が流出してるとしたら普通に嫌です。しかし、情報流出に関して神経質になりすぎるのはよくないとも思ってはいます。
どこからが過剰、神経質となるかはまた難しいですが、必要のないリスクを取るのは嫌なものです。
Negiにたどり着き利用してくれているユーザーさまのほとんどはそのような感覚なのではないでしょうか。
少し偏った個人的な話をしますが、個人情報といえば住所やクレジット番号などの、超個人的な情報に目が行きがちですが、どんな動画をよくみるのか?どんな買い物をしたのか?どんな話題に興味があるのか?などの情報を取得されることにも大きなリスクを感じています。
具体的には、アルゴリズムによって行動や興味が洗練され、個人の選択肢や視界が狭まるリスクに関してです。
物を売る側であったり、特定の状況下においては便利だと感じる機能、世界になっていますが、自分の過去の行動に基づいて「最適化」され続けると、自分が本来興味を持っていなかったはずの「未知の世界」や「予想外の新しい発見」に出会う余白がなくなっていきます。
それらが溢れていくと、本人は自分の意志で選んでいるつもりでも、実は提示された選択肢の中で踊らされている状態になりかねません。
もし、キーボードアプリが「日常のすべての入力テキスト(関心事、友人との会話、検索キーワードなど)」のデータにアクセスできる場合、抽出される「個人の傾向」の精度は極めて高くなります。
単なる「広告ターゲットの最適化」にとどまらず、その人がどのような言葉に反応し、どういうテーマに興味を示し、どんな決定を下しやすいかという意思決定の傾向までデータ化されることになります。
それが高度に分析された結果、画面上に並ぶニュース、おすすめ動画、表示されるすべてが「その人の偏りに応じたもの」へと最適化されてしまったら、世界はとても小さくなってしまう気がするので、超個人的な情報もそうですが、そういった面で傾向を取得、分析されるということにもリスクを私自身は感じています。
このように考えすぎも良くないと思いますが、抑えられるリスクは抑え、制限があるなかでそれなりに使いやすいアプリが提供出来たらと開発者自身は考えておりますので、コンセプトが気に入ってくださった方は、今後ともよろしくお願いいたします。